摂食嚥下障害について

飲み込みのしくみ〜嚥下障害と誤嚥〜

食べ物を飲み込んで胃に送り込むことを嚥下といいます。

飲み込む仕組み

  • 認識

    食べ物を見て認識すると、唾液や胃液が分泌され、体が食べるための準備を始める。

  • まとめられる

    口に入った食べ物は、噛んで唾液と混ざり、飲み込みやすい形にまとめられる。

  • 喉の奥まで送られる

    まとめられたかたまりが、喉の奥まで送られる。

  • 胃へ送られる

    脳に信号が送られ、反射的にゴックンと飲み込まれる。食べ物の逆流や気管への入り込みを防ぐ仕組みが働き、食道を通って胃へ送られる。

この過程に問題があり、食事中むせたり、うまく飲み込めない状態を「嚥下障害」といいます。

誤嚥とは?

食べた物が誤って気管に入ってしまうこと。窒息や肺炎を招くので、次の状態のときは要注意!
食べ物や口の中に含まれる細菌が誤って気管に入ると「誤嚥性肺炎」を起こします。

誤嚥性肺炎予防のポイント

  • 1飲食物の誤嚥を防ぐ

    とろみ調整食品や、やわらか食品などの利用

  • 2口腔内を清潔にしておく

    口腔ケアグッズの利用

  • 3胃から食道への逆流を防ぐため、食後2~3時間は起き上がった姿勢で過ごす
  • 4肺炎にかかりにくい、かかっても治りやすい体力をつけておく

参考:『飲み込みにくい方へ』向井美惠監修(ヘルシーフード)
『改訂版 図解かみにくい、飲み込みにくい人の食事』藤谷順子・江頭文江監修(主婦と生活社)


飲み込みやすくするためのポイント

次のような食感の食べ物は、むせたり、喉につまったりする可能性があります。
飲み込みやすくなるように工夫をしましょう!

具体例

この他にも粘り気の強い“もち”や、噛み切りにくい“いか”、“たこ”などにも注意が必要です。

  • パサパサな食べ物
  • ボロボロになる食べ物
  • サラサラな飲み物
  • ペラペラな食べ物

飲み込みやすくするポイント

  • 1適度な水分を含ませてぱさつきを防ぐ
    適度な水分を含ませてぱさつきを防ぐ
  • 2ツルンとさせてのどごしをよくする

    ゼラチンなどで固める

    ツルンとさせてのどごしをよくする ゼラチンなどで固める
  • 3とろみをつけたり、油脂でまとめてばらけるのを防ぐ

    例)あんをからめる、マヨネーズなどで和える

    とろみをつけたり、油脂でまとめてばらけるのを防ぐ
  • 4液体にはとろみをつけてむせを防ぐ

    とろみ調整食品が便利!

    液体にはとろみをつけてむせを防ぐ
  • 5食べやすい形状にする

    刻み食は口の中でばらけないよう、あんでまとめるなど工夫が必要

    食べやすい形状にする
  • 6やわらかく煮込む
    やわらかく煮込む
楽しい食事は心と体に栄養を与えます。調理をちょっと工夫すれば、おいしく食べられますね!

参考:『改訂版 図解かみにくい、飲み込みにくい人の食事』藤谷順子・江頭文江監修(主婦と生活社)
『「食べる」介護がまるごとわかる本』 菊谷武 著(メディカ出版)


飲み込みやすい食事の姿勢

いすでの食事(座位)

食べやすい姿勢
  • 1
    背筋を伸ばしてあごを軽く引き、やや前かがみ
  • 2
    背もたれのあるいすに深く腰かける
  • 3
    テーブルの高さは、腕を乗せてひじが90度に曲がる程度
  • 4
    体とテーブルの間はこぶし一つ分くらい開ける
  • 5
    いすの高さはひざが90度に曲がる程度
  • 6
    足は床につける
食べにくい姿勢(例)姿勢が安定しないと、食べ物が口に上手く運べずこぼしたり、誤嚥につながる恐れがあります。
  • 1
    背中が丸くなっている
  • 2
    体とテーブルの距離が遠い
  • 3
    あごが上がっている

    飲み込みにくくなります。

  • 4
    いすとテーブルが高すぎたり低すぎたりする
  • 5
    足が浮いており姿勢が不安定

    前かがみの姿勢がとりにくくなります。

ベッドでの食事(リクライニング位)

食べやすい姿勢
  • 1
    背の角度は、食べやすくなるよう調整(45〜60度以上)

    上体をやや後方に倒すと舌に傾斜がつき、食べ物が咽頭へ送りこまれやすくなります。

  • 2
    頭に枕などを当て、やや前かがみ
  • 3
    腰はベッドの折れ目に合わせる(合わない場合は、背にクッションなどを当てて調整する)
  • 4
    ひざは軽く曲げる(ベッドの折れ目に合わせたり、ひざ下にクッションなどを当てる)
  • 5
    足がずり下がらないように足の裏にクッションなどを当てる
食べにくい姿勢(例)

姿勢が安定しないと、食べ物が口に上手く運べずこぼしたり、誤嚥につながる恐れがあります。

  • 1
    仰向けに近い状態

    ベッドを少し起こした状態では、前かがみになることが難しく、あごも上がるので、嚥下しづらくなります。

  • 2
    テーブルが高い、体との距離が遠い
  • 3
    身体がずれて姿勢が不安定、腰が曲がっている

    腹部が圧迫されて苦しくなり、食事が摂りにくくなります。
    腰痛、誤嚥のリスクも高まります。

※上記は一例です。「食べやすい姿勢」には個人差がありますのでご本人様に応じてご調整ください。

飲み込みやすい姿勢は『やや前かがみ』

前かがみになると

咽頭から気管への角度がつき、気管よりも食道に食べ物が流れ込みやすくなります。誤嚥しにくくなります!!

前かがみでないと

咽頭から気管への角度が直線となり、食べ物が気管に入り込みやすくなります。誤嚥しやすくなります。

介助する側も注意が必要です!

「召し上がる方の斜め横あたりに座り、食べ物は少し下から口へ運ぶ」がポイントです。

前に座ると圧迫感を与えてしまいます。

介助する方が立っていると、食べ物を上から口へ運ぶことになります。召し上がる方は上を向きあごが上がるため、飲み込みにくくなるだけでなく、誤嚥の原因にもつながります。

食後にも気配りを

食後すぐに仰向けになると、食べ物が逆流したり、口の中に残っていた食べ物が気管へ流れ誤嚥につながる可能性があります。できれば、食後2~3時間は上体を起こしておくとよいですよ。

参考:『写真とイラストですぐわかる!安全・やさしい介護術』橋本正明監修(西東社)
『NSTで使える栄養アセスメント&ケア』足立香代子・小山広人編(学習研究社)
『介護のための摂食・嚥下障害の理解とケア』小澤公人編著(ナツメ社)
『改訂版 図解かみにくい、飲み込みにくい人の食事』藤谷順子・江頭文江監修(主婦と生活社)


とろみ調整食品

飲み込む機能が低下した方は液体

のどを流れるスピードが速く、誤って気管に入りやすいので、とろみをつけて流れを緩やかにするとむせを防げます。

とろみ調整食品の使い方

  • 液体をスプーンでかき混ぜながら、とろみ調整食品を入れる。

  • 2~3分待つ

    溶かしてからとろみの状態が安定するまで待ち(約2~3分)、とろみの状態や温度を確認する。

とろみの強さ

とろみ調整食品の使用量により調整できます。

強すぎるとろみには要注意!

藤田医科大学 客員教授小島千枝子先生にお聞きしました

とろみの強さは飲み込む能力によるため、ドロッとしたとんかつソース状が良い場合もあれば、サラッとしたポタージュ状が良い場合もあり、その方に適した強さに調整することが大切です。
ジャムのような硬さにするとべたつきが強くなり、口やのどに貼り付きやすいため、かえって飲み込み難くなります。のどに残りやすく、場合により窒息に繋がる恐れもあるので、いつものとろみが強すぎないか見直しましょう。

適切な強さのとろみをつけるポイント

1コップやスプーンはいつも同じものを使う。

2毎回すりきりで量る。同じ1杯でも、すくえる量が大きく変わります。

とろみづけで困ったときのQ&A

Qダマをできなくするコツとは?
A
  • 方法1

    スプーンを左右に往復させ、とろみ調整食品を散らすようにかき混ぜる。

  • 方法2

    乾いたコップに先にとろみ調整食品を入れておき、後から飲み物を勢いよく注ぐ。

  • 方法3

    スプーンのかわりに小型の泡立て器やフォークを使って混ぜる。

Qとろみがすぐにつかないのはなぜ?量が足りてないの?
A混ぜる時間が短い可能性があります。30秒くらいは混ぜましょう。

同じ飲み物でも冷たい方がとろみがつき難いので、冷たい場合は特に長めに!また、飲み物の種類や温度によって、とろみのつき方に違いがあります。

とろみが安定するのに要する時間
Qとろみがつき難い飲み物へ上手くつけるコツは?
A「二度混ぜ法」がオススメ。

しっかりとろみがつき、一旦ついたとろみの強さも安定します。とろみ調整食品の使用量は水・お茶の場合と同じか、やや増やす程度でOK

  • とろみ調整食品を入れ30秒以上混ぜる。

  • 水を吸わせるため、2~15分置く。

  • 再度30~60秒混ぜる。

二度混ぜ時に置く時間の目安

自分に合った食品を選ぼう!

能力に応じた食べ物を

噛む力、飲み込む力が低下しても、やわらかさや食べ物の形態を工夫すれば、食事を楽しむことができます。一人ひとりの能力に応じて、食べやすいものを選びましょう。

食品選びの参考に…

自分の状態に適した食品は、日本介護食品協議会が制定する食品の「かたさ」や「粘度」に応じた4つの区分を参考にすると選びやすいです。

ユニバーサルデザインフード区分表
ユニバーサルデザインフード区分表

ヘルシーネットワークの通販サイトヘルシーネットワークへでは、各区分ややわらかさの段階に応じた商品を掲載しています!そちらも参考にしてください。


おかゆ作りの工夫

「おかゆ」の基本の作り方と、電子レンジ調理でできる簡単な作り方をご紹介します。

おかゆ(全粥) 基本の作り方

材料

ごはん:100g

水:200ml

作り方
  1. 鍋にごはんと水を入れて火にかけ、ふつふつしてきたら弱火で約5分煮る。
  2. 火を止め、蓋をして、約10分間蒸らす。

※冷えたごはんは温めてから使うと調理し易くなります。

おかゆの硬さは水の分量や火加減、炊く時間によって変わります。
水加減はお好みの硬さになるよう調整してください。

おかゆはまとめて作って冷凍し、必要な分だけ解凍すると便利ですよ!

おかゆの水加減〈目安〉
(ごはんと水の割合)

おかゆの水加減

電子レンジで少量調理

材料

ごはん:50g

水:100ml

作り方
  1. 大きめの耐熱容器にごはんと水を入れ、端を少し開けてラップをする。
  2. レンジ(500W)で約5分間加熱する。
  3. 取り出して、ラップのまま約10分間蒸らす。

※加熱時間は電子レンジの機種により異なります。状態を確認しながらご調整ください。

【ミキサー粥】
米粒が気になる方に!

おかゆをミキサーにかけると、米粒の無いなめらかな「ミキサー粥」が作れます。
七分粥程度の硬さのおかゆを使うと、程よい粘りになりますよ。
とろみをつける際は、とろみ調整食品や固形化補助食品、水溶き片栗粉などでご調整ください。

商品を活用してもっと気軽に!

ミキサー粥の「べたついて飲み込みづらい」「まとまりがなく食べづらい」「後片付けが大変」などのお悩みに応える商品をご紹介します!

なめらかおかゆ
快食応援団 なめらかおかゆ快食応援団なめらかおかゆの商品ページへ

温めるだけで食べられる、ペースト状のなめらかおかゆ。粘つきを抑えた、飲み込みやすい食感。

ホット&ソフトプラス
ホット&ソフトプラスホット&ソフトプラスの商品ページへ

全粥と一緒にミキサーにかけると、ゼリー状になる固形化補助食品。
ミキサーや器にこびりつかず後片付けが簡単。


災害時の備え

地震や台風などの災害はいつどこで起こるかわかりません。いざという時のために、普段から備えておくことが重要です。

非常時はこんなことに困る

災害の種類や規模・地域にもよりますが、被害が大きい場合はライフラインも壊滅状態となります。
電気は比較的早く復旧する可能性が高いと想定されるものの、ガスや水道の復旧作業には1週間以上の時間を要することが想定されています。また物流機能が停止し、食料の供給が滞る可能性があります。
そのため、水や熱源となるカセットコンロ、食品などの備えが日頃から必要です。
さらに交通状況等によっては通院できず、いつも服用している薬が手に入らない場合もあるので、お薬手帳のコピーと薬の予備を準備しておきましょう。

【備蓄しておくと良いもの(例)】

  • 飲料水
  • 食料品
  • 衛生用品(ペーパー・袋・ウエットティッシュ・簡易トレイ等)
  • お薬手帳のコピー
  • 懐中電灯/電池
  • モバイルバッテリー/ラジオ
  • 軍手
  • カセットコンロ/ボンベ など
備蓄しておくと良いもの 飲料水、食料品、懐中電灯、カセットコンロなど

いつどこで起こるかわからない災害。備蓄品のチェックリストを作成し、日頃から備えておくことが大切です。

「ローリングストック」をして備えよう

災害時に支給される食事は一般的な人が生き延びるのに必要なもので構成されています。
おにぎりやパン・乾パン、カップ麺、バナナなど。よく噛む必要があって、口の中でバラけやすく飲み込みづらいものが多いです。やわらかさや具材の大きさには配慮されていません。
ムセるのが怖い・食べづらいと言って、食べない状態が続くと低栄養や脱水になりかねません。
きちんと食事ができるよう、召し上がる方の状態に合わせたやわらかさや形状の食品を備蓄するなどの対策を日頃から立てておくことが大切です。

そこでおすすめしたいのが「ローリングストック」という方法です。
普段食べているものを少し多めに買っておき、食べたら食べた分だけ買い足し、常に一定量の食品を家に備蓄しておく方法です。
この方法であれば、賞味期限が長期間確保された食品でなくても備蓄しておくことができます。

ローリングストックは「備える」「食べる」「買い足す」で回転させながら備えること

ローリングストック

備えのメリット

買い忘れを防げる

いつもの商品が非常食代わりになる

備えのポイント

少なくとも2週間分の備えがあると安心。

調理できるように水、鍋、カセットコンロ、ガスボンベの用意も忘れずに。

備蓄品の目安として、食べ物・飲み物ともに最低3日分(9食・9ℓ)といわれています。
介護食品に限らず一般の食品も同じ方法で備蓄できるので、家族の分も同様にして、日頃から備蓄するように心掛けましょう。

備えておきたい「介護食品・高栄養食品」

お湯があれば食べられる

カセットコンロ等でお湯を沸かせられれば、容器ごと湯せんで温められます。
商品によっては温めずに召し上がることもできます。

そのまま食べられる

エネルギーやたんぱく質などの栄養素、水分が不足している時の補食に便利です。

液体にとろみをつける

サラサラした液体が飲みづらい方は必須です。
ご利用にはコップとかき混ぜる為のスプーン等が必要です。

とろみ調整食品
とろみ調整食品

参考:『要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド』農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室
一般社団法人 日本気象協会 「知る防災」サイト https://tenki.jp/bousai/knowledge/stock/日本気象協会 「知る防災」サイトへ


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