
(体験談)
たんぱく質・塩分調整食品をお使いの方

慢性腎不全
福島県会津若松市 会津腎臓を考える会 代表 石橋恒男様 62歳 男性♂
「慢性腎不全保存期 22年の軌跡-心筋梗塞を乗り越えてー」
■栄養士さんとの出会い -「透析」への絶望感-
<最初の症状~受診>
平成8年6月、体がだるくて疲れが取れない、後頭部が重くて夜中に体が震える症状が出始めました。たまたま近くの市民センターで血圧を測ったら、収縮期血圧150mmHg/拡張期血圧90 mmHgの表示が出たため、翌日慌てて地元の病院を受診しました。
医師からは、「仕事の疲れからくる単なる寝不足だから、しばらく安静にしていなさい。」との診断でした。しかし私自身、20歳の頃から尿たんぱくが出ていました。そのことを医療関係の勉強をしたことのある妻が覚えており、「腎臓が悪いと血圧が上がるから、腎機能検査をした方が良い。」と勧めてくれ、腎機能の検査をすることにしました。
<検査の結果~入退院>
血液検査の結果、クレアチニン1.6mg/dl、尿たんぱく+3の値が出たため、医師から精密検査を勧められました。24時間蓄尿を行った結果、尿たんぱく総排泄量が非常に多く、「ネフローゼ症候群」との診断を受けました。その後治療を受けるために入院しましたが、入院中の検査でネフローゼ症候群ではないことがわかりました。
詳しく調べるため、腎生検をするためのエコー検査を受けたところ、右側の腎臓が萎縮してモニターに映りませんでした。さらに、残りの左の腎臓も萎縮していることがわかったのです。腎臓が片側しかない場合、腎生検を受けることが出来ないため、2~3日後に退院することになりました。退院前、医師から「現代医学では、治療方法は見当たらないが、腎臓病の低たんぱく食事療法で透析までの期間を伸ばすことが出来る」と説明を受けました。
<退院時の食事指導>
退院時の医師からの食事指示はたんぱく質50g、塩分7gでしたが、栄養士さんからは、たんぱく質50gは多すぎるから40gの方が良いと指導を受け、下記内容をベースに40gの食事療法を始めることになりました。
【指導内容】
朝食:普通のご飯を茶碗に8分目くらい
昼食:でんぷんスパゲティを150gくらい
夕食:低たんぱくのパックごはんを1パック
以上を基本として、おかずを秤にのせて、計量しながら食べる。
退院のときに栄養士さんから言われた「石橋さん、食事療法をやって、透析まで10年持てば良いじゃない」と言われ、食事療法をやっても透析まで10年しか持たないのかと絶望感を感じたことは今でも忘れません。
■出浦先生との出会い -たんぱく質摂取量20gの開始-
<出浦先生の講演会に参加>
7月の退院時に、栄養士さんに7月末に郡山市で低たんぱく食事療法の第一人者でもある、出浦照國先生による講演会があることを教えてもらい、参加してみることにしました。
講演会では、たんぱく質摂取量が30gと20gの違いが腎機能の保護にどれだけ効果があるか、資料を見ながら説明を受けました。栄養士さんから40gと言われ実行してきましたが、出浦先生の講演を拝聴して、少しでも透析までの期間が延びるように、たんぱく質摂取量を20gに変更しました。
<変更しようと思ったその他の理由>
20gに変更しようと思ったのは、出浦先生のお話しによるところ大きいですが、他にも2つの理由がありました。1つ目は20歳頃から尿たんぱくが出ていることを知っていながら、自覚症状が無いので何の治療もせずそのままにし、腎臓が片方しか機能しなくなってしまった事への後悔と、残っている腎臓が愛おしくなって、食事療法で負担を軽くしてあげようと思ったこと、もう1つは退院の際に「透析まで10年持てば良いじゃない」と言われたことに対し、「10年で透析になるんだったら、1年でも2年でも長持ちさせて栄養士さんを見返してやろう」という反発心が出てきたことです。こうなったら一生透析から逃れてやろうという固い決意のもと、たんぱく質摂取量20gの生活をスタートさせました。
■たんぱく質量20g生活 -治療用特殊食品の利用-
<治療用特殊食品の利用>
食事記録をつけて計算上は、たんぱく質摂取量20g、塩分摂取量5g、エネルギー2,200kcalになるようにしました。でんぷん米等のでんぷん製品はメーカー数社から販売されていましたが、あまり美味しくないと聞いていたため、昼食にでんぷんスパゲティだけを食べるようにし、その他はパックごはんや乾麺をよく利用していました。また、カロリーを上げるため、油を積極的に摂取するように気をつけていました。
<数値の改善と体調不良>
こうしてたんぱく質摂取量を20gを続けていると、以前76kgあった体重が3ヶ月で56kgまで減少しました。さらにクレアチニンの値が自分でも驚く程みるみる良くなり、初診時1.6mg/dl、入院中1.9 mg/dlだった数値が、受診するたびに1.5、1.4・・そしてついには1.1 mg/dlまで下がりました。おそらく体重の減少と密接な関係があったのだと思います。
しかし急激に体重が減少したため、数値が良くなるのとは反対に体に様々な症状が出てくるようになりました。
【主な症状】
- 体力の低下
- すぐに疲れやすくなって、立っているのが辛い
- 仕事で動くことがきつい
- 会話するのにも体力が無いので声に力が入らない
- 時間を見つけては横になる時間が増えた
今思うと、たんぱく質の摂取量を減らすことにとらわれ過ぎ、心の中でそもそもたんぱく質を摂らなければ良いという思いがあったため、肉や血となるものを食べていなかった気がします。つまり油を多く摂っていたので、計算上は必要なカロリー量を満たしていましたが、栄養バランスが崩れていたのです。
■でんぷん米との出会い -食事療法の転機-
<「でんぷん米」>
そんな生活を送っていたところ、新しく担当になった栄養士さんが当時新発売したでんぷん米を勧めてくれました。その栄養士さんは、今までのでんぷん米と違って、ずいぶん食べやすくなったからぜひ試してみてはどうかと、自宅が近所だったこともあり、わざわざ我が家まで来て説明をしてくれました。このことが今後の食事療法に大きな影響を与えることになったのです。
<でんぷん米を美味しく食べる>
今現在、栄養士さんから勧められ食べ始めてから随分経ちますが、今まで一度もまずいと思ったことはありません。もしかしたら福島のお米より美味しいかもしれないとさえ感じます。ただ、体調によっては一時的にでんぷん米以外の食事を摂りたいと思うことがあり、他の食事をすることがありますが、次の食事は必ずでんぷん米を食べるようにしています。
でんぷん米は美味しくないと言う人は多いですが、自分は下記の方法で食べています。
【でんぷん米の調理のポイント・おいしく食べるコツ】
- でんぷん米の量に対し、水を2.5倍
- 炊飯釜に①水、②油を少々、③でんぷん米の順に入れて軽く5~6回かき混ぜてからスイッチを入れる
※油少々・・でんぷん米100g、水250ccに対して2~3滴(べに花油以外) - 一度に4食分炊く(360g・1食当たり90g)
- 冷めたら電子レンジで温めて食べる
長続きするための最大のコツは、面倒な手間をかけないことが一番だと思いました。トレハロースやもち粉を入れたり、げんたもちを小さく切って一緒に炊く方法もやりました。もちろん美味しく炊くことができますが、面倒臭がりな自分には少し手間でした。水にでんぷん米と油を入れスイッチを入れるだけ、この方法が自分には一番合っていました。手間をかけるもよし、手間をかけないのもよし、自分なりの食べ方を見つけることが一番だと思います。
■食事療法のポイント
<食品成分表を自分流にカスタマイズ>
食事記録をつけていると、普段食べている動物性たんぱく質量が100gあたり20~30gだということに気付きました。そして、肉・魚類のたんぱく質摂取量を1食あたり6gと決めて食べるようにしました。(だいたい20~30gの肉・魚でたんぱく質6g)そうすることで、決められた量を食べると、たんぱく質摂取量が6gと簡単に計算できるようになります。
<計算する煩わしさがなくなる>
1食あたり6gの良質なたんぱく質を1日3食摂れば、18g摂ることができ、1日あたりたんぱく質制限が30gの場合、60%の良質なたんぱく質を摂ることができます。野菜等は普段食べている量で換算するとたんぱく質1gと0.5gの2つに分けられることがわかりましたので、2つの区分に分けておきます。肉・魚・野菜のだいたいの食べられる量を決めておくと、組み合わせを変えるだけなので、計算する煩わしさも消え、食事のバリエーションを増やすことができます。
ちなみに、乳製品はおかずにならないためほとんど食べません。
■現在の食事
<たんぱく質摂取量20g→30gへ変更>
より本格的に食事療法をやってみたいという思いから、過去に講演を拝聴した出浦先生に診察をお願いしてみました。検査データ、食事記録を見ていただいたところ、たんぱく質30g、塩分5gで良いとの結果を頂戴しましたので、その時から20g→30gに変更することにしました。
■「会津腎臓を考える会」
<発足>
総合病院の栄養士数名と患者10名ほどが参加し、平成11年4月に第1回の勉強会を開催しました。
【勉強会の内容】
- 午前:治療用特殊食品を使った調理実習と試食
- 午後:毎回異なるテーマでの勉強会
(検査データの見方、食事記録の計算方法、記帳の仕方等、懇談会)
<理念>
病院に行くと、患者と医師・栄養士のつながりはありますが、患者同士の横のつながりはありません。情報を必要としているのに情報を共有する場がない。そんな問題を解決するべく、下記理念のもと活動をしています。
その1:透析予防を目的とした、低たんぱく・減塩食の調理実習を行うこと
その2:患者及び医療従事者の交流並びに情報交換の場を提供すること
その3:食事療法を継続するための、コツを考えること
参加された方の多くは自ら自分の数値・食事療法のコツを話されますので、毎回和気あいあいとした意見交換が行われています。
<活動の様子>




たまにはこんなメニューの時も・・


■忘れもしません!心筋梗塞を発症
2017年2月16日誕生日の朝8時半頃に心筋梗塞を発症し、救急車で病院に搬送され、冠状動脈をバルーンで拡張し、ステントで処置を行う緊急手術を行いました。慢性腎不全による動脈硬化が原因と思われます。夜は2時間おきにニトログリセリンを服用し症状が緩和しました。造影剤投与で腎機能低下が大変心配でしたが、慢性腎不全の情報を伝えてあったため、早期に大量の点滴投与で処置したことで腎機能の数字が安定しました。低たんぱくの食事療法をしっかりと行っていたため、腎機能に余裕があり治療に耐えられたものと思われます。
■食事療法21年をやってみて
現在の状況(2017年7月5日時点):BUN12mg/dl / Cr1.45mg/dl / GFR40ml/分/1.73 m2
食事療法は毎日、毎食の積み重ねであることを日々実感しております。続けることは大変ですが、続けることで今も元気に毎日を過ごしています。継続は力なり!
この経験談が皆様のお役に立てば幸いです。
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