
適切なたんぱく質の制限
たんぱく質を減らそう
神奈川工科大学 健康医療学部 管理栄養学科 教授 菅野 丈夫 先生にお伺いしました。
なぜたんぱく質を減らす必要があるの?
食事から摂ったたんぱく質がからだの中で代謝されると老廃物が残ります。この老廃物をろ過してからだの外に出しているのが腎臓です。たんぱく質をたくさん摂ると腎臓の負担が大きくなるので、たんぱく質を控えて腎臓の負担を軽くする必要があります。
Q.では、たんぱく質を減らすにはどうすればよいのでしょうか?
A.食事療法について絶対に欠かせない基本「主食は、でんぷん製品またはたんぱく質調整食品を使用すること」が必要です。
※ 以下、でんぷん製品及びたんぱく質調整食品を合わせて「低たんぱく質食品」と表記。
主食のたんぱく質を減らし、食事を豊かにする
たんぱく質は、ごはんやパン、麺類などの主食にも多く含まれています。
ごはん180gを低たんぱく質食品に替えるだけで、4g以上ものたんぱく質を節約することができます。
主食(ごはん180g当り)のたんぱく質量

質の良いたんぱく質を摂る
からだにとって重要な「必須アミノ酸」をたんぱく質から摂取する必要があり、これをバランスよく含んでいるものは質の良いたんぱく質とされています。

必須アミノ酸とは
たんぱく質は20種類のアミノ酸からできています。
そのうち、体内でつくることができない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」、
体内でつくることができる11種類のアミノ酸を「非必須アミノ酸」と呼びます。
「必須アミノ酸」は自分でつくることができないので、日々の食事から摂取しなければなりません。
「質の良いたんぱく質」とは、この必須アミノ酸がバランスよく入っていることをいい、このバランスを評価する指標をアミノ酸スコアといいます。
それぞれの必須アミノ酸が全て必要量を満たしていればアミノ酸スコアは100となり、100に近いほど体内での利用効率が良いたんぱく質、つまり「質の良いたんぱく質」ということになります。
必須アミノ酸 | バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、スレオニン、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン |
---|---|
非必須アミノ酸 | グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、システイン、チロシン、プロリン |
このアミノ酸スコアはよく「桶」で例えられます。
何枚かの板で作られた桶に水を溜める場合、1枚でも背の低い板があると、そこから水が流れ出て1番背の低い板の高さまでしか水は溜まりません。
アミノ酸スコアも同様で、食品中のたんぱく質を構成する1番少ない必須アミノ酸によって、アミノ酸スコアが決まります。
アミノ酸スコアは食品単体を評価する指標です。アミノ酸スコアが低い食品であっても、他の食品と一緒に摂ることでアミノ酸スコアを改善することができます。

アミノ酸スコア 100卵、牛肉、豚肉、牛乳など
体内で効率良く利用される。



アミノ酸スコア 100以下精白米、パンなど
1番低い必須アミノ酸レベルまでしか使われない。

参考:味の素(株)情報サイト「アミノ酸大百科」https://www.ajinomoto.co.jp/amino/
献立例で見る!食事療法の効果
一般的な1日分の食事を基に、低たんぱく食(30g制限)を展開しています。左列が一般的な食事、中央列がたんぱく質調整食品不使用の低たんぱく食。右列が主食をたんぱく質調整食品に替えた低たんぱく食です。それぞれの展開で食事内容を比較してみましょう。















解説
●たんぱく質調整食品不使用の低たんぱく食
・おかずが少なく、寂しいメニューになる。
・食事量全体の減少により、必要なエネルギーが不足してしまう。
●たんぱく質調整食品を使用した低たんぱく食
・一般的な食事(左列)と同じようなメニューになる。
・食事量が変わらないのでエネルギーを十分に確保できる。
さらに! たんぱく質調整食品を使用し、たんぱく質を減らすと、カリウム量の減少にも繋がります。生野菜や果物を取り入れた献立にしてもカリウム摂取量は多くならないのです(右列)。
これは、特に1日30g以下の低たんぱく食で効果的です! 難しく考えず、まずは 「主食を低たんぱく質食品に替える」。この基本を守って、無理のない 食事療法を実践しましよう。
良質なたんぱく質を摂るために
主食をたんぱく質調整食品に置き換えるとおかずのボリュームを増やせます!
たんぱく質の指示量1食当り10gとした場合主食を置き換えるだけでこんなに違う!
主食のたんぱく質が減った分、
おかずから摂るたんぱく質を増せる
良質なたんぱく質を含む肉や魚は同じ重量でも部位や種類によって差があるので比べてみましょう。
肉類全て30g当り
脂質を含む部位の方がたんぱく質が少なめなので多く食べられます!
魚介類全て30g当り
脂質が少ない分たんぱく質も高め。
豆類・卵類1食当り

乳・乳製品1食当り

ワンポイントアドバイス
1食当りのたんぱく質の指示量は人それぞれです。自分の適正な量に収まるように様々な食品をバランスよく食べることが◎
ご注意:食品ごとに量が異なります。
食品ごとに写真の大きさ(倍率)が異なります。
食品の記載量は「可食部」です。廃棄量※は除いています(※骨、殻など食べられない部分)。
参考:『腎臓病の人のための食品成分表[ポケット版]貴堂明世監修(主婦の友社)
『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
市販品・外食選びのポイント
市販品や外食を利用した時でも食事療法ができるようにメニューの選び方、食べ方のコツをご紹介します!
1栄養成分票の確認
市販品はパッケージ
外食はメニューやインターネットで確認する
2選び方のポイント
自分の適正な量に収まるようにメニューを選ぶ
市販品
栄養計算し、おかずを組み合わせる
1食分の一例
とろける5種のチーズハンバーグ
100g(1袋)当り
エネルギー:178kcal
たんぱく質:9.3g
塩分:1.3g
ごぼうサラダ
45g(1袋の半分量)当り
エネルギー:83kcal
たんぱく質:0.9g
塩分:0.55g
そらまめ食堂1/25ごはん
180g(1個)当り
エネルギー:282kcal
たんぱく質:0.18g
塩分:0.01g
栄養成分合計エネルギー:543kcal、たんぱく質:10.38g、塩分1.86g

たんぱく質は低めでエネルギーは高めな商品の一例
コロッケ
1個(80g)当り
エネルギー:181kcal
たんぱく質:4.2g
レトルトカレー
1袋(200g)当り
エネルギー:238kcal
たんぱく質:4.8g
みかん・缶詰
10房(130g)当り
エネルギー:82kcal
たんぱく質:0.7g
外食
味付けや量を調整しやすい定食メニューが◎
選ぶおかずはエネルギーアップができる揚げ物がオススメ。

食べ方のコツ
写真のメニューを解説します。

ソースやドレッシングはかけずにつける
ソースなどは別皿でもらい、つけて食べることで塩分を0.4gカット※
※「減塩のコツ 食べ方編」参照具だけ食べる
汁を残すことで塩分を約1gカット!
食べる量を調整する
肉・魚のおかずは高たんぱく質。勇気を出して残すことも必要です。食べ過ぎたと感じたら後の食事で調整しましょう。
たんぱく質調整ごはんに変えてもらう
たんぱく質調整ごはんを持参して提供してもらえれば普段の食事療法がお店でもできますね!
※上記対応が可能か事前にお店に確認しておくと安心です。
参考:『おいしく食べて、透析を遅らせる 腎臓病の食事療法とかんたん献立』 酒井謙・志波郁子監修(池田書店)
『低たんぱく食で おいしくて、元気』 佐野川三央子・井浦照國(月刊「食生活」編集部)
『大きな文字でさっと探せる 腎臓病の食品成分表』 金澤良枝監修(女子栄養大学栄養クリニック)
『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
●腎臓病について
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